文例・記録 4
地域包括支援センターに相談するときの電話の台本(5場面)
執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん))
実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中
法律部分:司法書士・行政書士 確認中
公開 2026-10-02/更新 2026-10-02
包括に電話したいけれど、「何をどう言えば相談として受け取ってもらえるか」で手が止まる人のための記事です。包括は「虐待かどうか分からない」「まだ何も起きていない」段階の相談を受ける場所です。完璧に整理してからでなくてよいので、電話の前に5つだけそろえて、30秒の台本で切り出してください。
電話の前にそろえる5つ
| # | そろえるもの | メモの書き方 |
|---|---|---|
| 1 | 相談の種類 | 「相談」か「通報」か「情報共有」か。迷うなら「相談」でよい |
| 2 | 本人の属性(氏名は言わない前提) | 年代・性別・要介護度・世帯(独居/長男と同居など)・主な疾患。氏名・住所は聞かれてから |
| 3 | 気になった事実 | 見たこと・聞いたこと・日時。3つまでに絞る |
| 4 | もう試したこと | 家族への連絡(日付・回数)、本人への説明、サービス事業所との相談 |
| 5 | 包括に何をしてほしいか | 助言だけ/同行訪問/事実確認/地域ケア会議/市町村へのつなぎ |
### 氏名を言わない前提のメモの作り方
包括への最初の電話は、氏名を出さずに「こういう方がいるのですが」で始めてよいことがほとんどです。個人情報の扱いを気にして電話をためらうより、匿名で聞き始めるほうが早く動けます。
メモは次のように書いておきます。
- 「80代女性・要介護2・長男(50代)と同居・日中は独居・認知症の診断あり」
- 「○月○日訪問時、左上腕内側にあざ2か所(約3cm)。本人『転んだ』。冷蔵庫に食パンと調味料のみ」
- 「長男に○日・○日電話、不通」
- 「してほしいこと:事実確認をお願いしたい。私が同行できる日は○日」
氏名・住所は、包括が「対応します」となった時点で聞かれるので、そのときに伝えます。伝えたら、記録に「包括○○氏に氏名・住所を伝え、○日に訪問予定」と残します。
### 電話のあとに必ずすること
- 相手の名前・日時・返答を記録に残す(「包括○○氏より『○日に訪問し事実確認する』と回答」)
- 管理者に報告する(通報の場合は電話の前に)
- 包括から「○日までに」と言われたことは、その日までに確認の一報を入れる
場面1 虐待かどうか分からないが気になる
「○○居宅のケアマネの○○です。虐待かどうか分からないのですが、気になる方がいて相談させてください。80代女性、要介護2、長男さんと同居で日中はお一人です。○月○日の訪問で、左の上腕の内側に3cmほどのあざが2か所。ご本人は『転んだ』と話しています。冷蔵庫は食パンと調味料だけで、前回より痩せた様子です。今すぐの危険はないと思いますが、事実確認をお願いできますか。管理者には報告済みです。」
台本のあとに聞かれること:氏名・住所・長男の在宅時間・本人の認知機能・サービスの利用状況・次回の訪問日。
場面2 身寄りがない人の入院
「○○居宅のケアマネの○○です。身寄りのない方の入院で相談させてください。70代男性、独居で要介護1、親族はいないと聞いています。○月○日に○○病院に入院し、身元保証人を求められています。緊急連絡先は当事業所で受けられます(管理者確認済み)が、支払いと退院後の組み立てを一人で決めるのが難しくて。社協の日常生活自立支援事業が使えるか、後見も含めて、一緒に見ていただけますか。」
台本のあとに聞かれること:本人の判断力・年金額と預貯金のおおよそ・病院名と相談員の名前・退院の見込み。
場面3 本人が支援を拒む
「○○居宅のケアマネの○○です。サービスを受けたがらない方のことで相談させてください。80代女性、独居で要介護1です。ヘルパーの導入を『他人に台所を触られたくない』と断られています。○月○日の訪問で台所にごみ袋3つとにおい、冷蔵庫はパンと牛乳だけ、ご本人は『服がゆるくなった』と話しています。傷やあざはありません。意向は尊重したいのですが、このまま離れるのも心配で、セルフネグレクトのおそれとして共有させてください。同行訪問をお願いできますか。」
台本のあとに聞かれること:本人が唯一話を聞く相手(家族・近所・かかりつけ医)・受診の状況・家族の有無と連絡先・訪問を受け入れている頻度。
場面4 家族と連絡がつかない
「○○居宅のケアマネの○○です。キーパーソンと連絡がつかない方のことで相談させてください。80代女性、独居で要介護2、緊急連絡先は市外の長男さんです。○日・○日・○日に電話して不通、○日に返信期限つきの手紙も送りましたが返事がありません。ご本人は理解できていて『自分で決めたい』とのことなので、本人同意で進めます。ただ、緊急時に長男さんとつながらない前提で支援を組みたいので、他の親族の調べ方と、包括で把握しておいていただけるかを相談させてください。」
台本のあとに聞かれること:本人の判断力・他の親族の手がかり(本人から聞いた名前)・支払いの状況・長男以外の緊急連絡先。
場面5 後見を考える段階か
「○○居宅のケアマネの○○です。後見制度を考える段階かどうかで迷っていて、相談させてください。80代女性、要介護3、長女さんが近くにお住まいです。物忘れが進み、○月に施設入所の契約が要りそうです。支払いは長女さんが管理、契約の理解は説明すれば部分的にできる、というのが主治医の見立てです。制度を使うべきかは私では判断できないので、必要な支援を整理する相談を長女さん同席でお願いしたいです。予約できる日はありますか。」
台本のあとに聞かれること:診断の有無・財産のおおよそ(預貯金・不動産)・親族間の意見の違い・契約の期日・本人の意向。
5場面に共通する言い方
- 最初に「相談させてください」と言う。「通報します」と言い切るのは、管理者と決めたときだけ
- 事実は「見た・聞いた・日付」の順で。「〜のようです」「〜だと思います」は事実のあとに分けて言う
- 「私では判断できないので」は弱さではなく、役割の線引き。包括はそれを聞きたい
- 最後は「お願いできますか」「相談させてください」で結ぶ。何をしてほしいかを一言で言うと、包括も動きやすい
根拠・参考
- 地域包括支援センターの業務に権利擁護(虐待の防止・早期発見、成年後見制度の利用支援)と包括的・継続的ケアマネジメント支援(ケアマネへの支援)が含まれる(介護保険法上の包括的支援事業。条文名は要確認)
- 高齢者虐待防止法では、市町村への通報・相談の窓口に地域包括支援センターが位置づけられている場合がある(市町村ごとに要確認)。「受けたと思われる」段階で通報してよく、確信は要らない
- 厚労省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(年月は要確認)
- セルフネグレクトは高齢者虐待防止法の定義には含まれないが、市町村・包括が対応すべきものとして国のマニュアルで扱われている(「市町村・地域包括支援センター向け高齢者虐待対応マニュアル」等。名称・年月は要確認)
- 家族への情報提供・第三者への情報共有は本人の同意が原則。緊急時や虐待の通報は例外として認められる場合がある(個人情報保護法・事業所の規程。要確認)

このケース、どうする?
文例の前に線引きを確かめたいときは、35の困りごとから選ぶと「あなたの役割はここまで」と「次に誰につなぐか」が出ます。
困りごとから選ぶ →更新履歴:2026-10-02 公開(たたき台・監修中)
