
これ、私がやるの? ケース5
契約書に代わりにサインして、と言われたら。ケアマネの代筆・代理の線引き
執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん))
実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中
法律部分:司法書士・行政書士 確認中
公開 2026-10-02/更新 2026-10-02
よくある場面 施設入所やサービス契約の場面。本人は手が震えて書けない、または認知症で理解が難しい。家族は遠方。施設や事業所から「ケアマネさんの代筆でいいですか」。家族から「私の代わりに書いといて」。

1まず結論
本人の代わりに契約者として署名する(代理・代筆)のはケアマネの役割ではありません。本人が理解して同意しているのに「字が書けないだけ」なら、本人の意思をどう確かめてどう残すかは、書類を出す側(施設・事業所)が自分たちの手順で決めることです。あなたの役割は「本人が理解しているか」を確かめ、「意思を確かめる場」を整えるところまでです。
2あなたがすること
- 「書けない」理由を分ける(字が書けない/理解が難しい/家族の欄)
- 本人に契約の中身を分かる言葉で説明する場を作る(施設・事業所の説明に同席する)
- 本人が理解して同意しているなら、その事実を記録に残す(誰が、いつ、何を説明し、本人が何と答えたか)
- 代筆が要る場合は、書類を出す側の手順に従ってもらう(本人の意思確認の記録・代筆者の記名など、施設・事業所の規程)
- 理解が難しい場合は、後見等の支援につなぐ
- 家族がいれば、家族が署名できる形(郵送・後日来所)を整える
3あなたが抱えなくていいこと
- 契約者本人の名前を書くこと(本人の代理として署名すること)
- 家族の名前を書くこと(家族欄の代筆)
- 医療の同意書への署名
- 金銭に関わる書類(保証・借入・売買)への関与
※「サインしない」=「契約が止まる」ではありません。本人の意思確認と、書類を出す側の手順で契約が進む形を整えるまでが役割です。
4次に確認すること
- 本人が契約の中身を理解して同意しているか(説明した人・本人の言葉)
- 書類を出す側(施設・事業所)に「本人が署名できない場合の手順」があるか(代筆の規程・意思確認の記録様式)
- 家族の署名欄が「必須」か「任意」か(連帯保証なのか、単なる連絡先なのか)
5誰につなぐか
| 順 | 先 | 何を |
|---|---|---|
| 1 | 書類を出す側(施設の生活相談員・サービス事業所の管理者) | 本人が署名できない場合の手順。意思確認への立ち会い |
| 2 | 家族 | 後日・郵送での署名。家族欄の扱い |
| 3 | 地域包括支援センター | 本人の理解が難しい場合の権利擁護、後見の入口 |
| 4 | 社会福祉協議会(日常生活自立支援事業) | 書類の手続きの支援(本人が契約できる場合) |
| 5 | 権利擁護センター・弁護士会・司法書士会 | 後見等の申立て、金銭に関わる契約の相談 |
相談先の名前は地域で違います。「お住まいの市区町村名+窓口名」で検索してください。
6相手への伝え方
本人へ:
「代わりに私がお名前を書くことはできないんです。でも、○○さんが『この内容でいい』と決めたことが、きちんと残るようにします。手が震えて書きにくいなら、施設の方に『ご本人が同意したことの残し方』を確認しますね。」
施設・事業所へ:
「ケアマネが代筆や代理で署名することはできません。ただ、ご本人は内容を理解して同意されています。御施設に『本人が署名できない場合の手順』があれば、その形で進めさせてください。ご本人への説明には私も同席します。ご家族の欄は、後日郵送で対応できるか確認させてください。」
7記録の残し方
○月○日、○○施設(相談員○○氏)より入所契約書の署名について「ケアマネの代筆で」と依頼あり。ケアマネは代筆・代理での署名はできない旨を説明し、了承を得る。本人に相談員から契約内容(サービス内容・利用料・解約)を説明、本人「分かりました、お願いします」と口頭で同意(ケアマネ同席)。手の震えで署名が難しいため、施設の規程に沿って本人の意思確認を記録する形で対応することで合意。家族(長男)欄は○日までに郵送で署名予定、長男に電話で確認済み。管理者に報告済み。
この記録の文例は、ほかの34場面と並べて記録文例集にもまとめています →
あなたのケースは?
4つの質問に答えると、この記事の線引きが「あなたの答え」に合わせて整理され、相談メモになります。
あなたのケースを3分で整理する →- 誰から頼まれましたか
- 本人は契約の中身(何のサービスに、いくら払うか)を理解できますか
- サインできない理由はどれに近いですか
- 何の書類ですか
8根拠
- 契約の署名は本人(または法律上の代理人)が行うもので、ケアマネに代理権はない(民法上の代理の考え方。要確認)
- 居宅介護支援の業務に契約の代理・代筆は含まれない
- 本人が決めるための支援の考え方は、厚労省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(平成30年6月。第2版 令和7年3月)に示されている
- 本人の判断が難しい場合の法律上の代理は成年後見制度(どの支援が要るかは包括・権利擁護センターで相談)
- 医療行為の同意は本人以外が代わりに行えるものではないとされる(厚労省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」)
- 自事業所の運営規程・就業規則(代筆・代理の禁止)を確認
一次資料(リンク先を実際に開いて確認済み)
- 中間整理(本文)※別添「居宅介護支援事業所におけるケアマネジャーの業務について」厚生労働省 ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会・令和6年12月
- 日常生活自立支援事業パンフレット「ここが知りたい 日常生活自立支援事業 なるほど質問箱」「あなたのくらしのあんしんのために」/厚労省制度ページ/事務連絡「日常生活自立支援事業の適正な実施の徹底について」社会福祉法人全国社会福祉協議会/厚生労働省社会・援護局地域福祉課・パンフ2009・2010年改訂/事務連絡 令和3年12月21日
- ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会(第6回)参考資料「ケアマネジメントに係る現状・課題」厚生労働省老健局・令和6年12月2日
- 権利擁護が必要と思われる場合の対応/権利擁護支援に関わるスクリーニングシート(Excel)文京区社会福祉協議会 権利擁護センター あんしんサポート文京・—
本文の「要確認」は、上の資料で確認し次第、表記を確定します。
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更新履歴:2026-10-02 公開(試作v1・監修中)
