となりのケアマネさん

これ、私がやるの? ケース12

家族の要求が過度・怖い。ハラスメントの記録と事業所での対応

執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん)) 実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中 法律部分:司法書士・行政書士 確認中 公開 2026-10-02/更新 2026-10-02

よくある場面 「24時間いつでも電話に出ろ」「あなたの対応が悪いから母が悪化した」と何度も長時間責められる。訪問時に怒鳴られる、机を叩かれる。「上に言うぞ」「ネットに書く」と言われる。断ると「担当を変えろ」と迫られる。夜間や休日に私用の携帯へかかってくる。

強い口調の家族の話を、ケアマネと管理者が並んで落ち着いて聞いている

1まず結論

家族からの威圧・過度な要求は、あなた一人で受け止める問題ではなく、事業所として対応する事項です。あなたの役割は「利用者の支援を続けるために、事実を残して事業所に上げる」ところまでで、相手を変えること・耐え続けることではありません。

2あなたがすること

  • 起きたことを事実のまま記録する(日時・場所・相手の言葉・自分の対応・その場にいた人)
  • 管理者に報告し、事業所として対応する体制を作る(複数名での対応・面談の場の設定・連絡窓口の一本化)
  • 家族の要求のうち「業務の範囲で対応できること」と「できないこと」を事業所として整理し、文書か面談で伝える(あなた個人でなく事業所の名前で)
  • 家族の要求の背景を見立てる(介護疲れ・不安・本人の状態への不満・家族自身の病気)→ 家族支援の資源につなぐ
  • 本人への影響を確認し、虐待の心配があれば包括・市町村へ相談・通報する
  • 対応の経過を支援経過に残し、必要なら担当変更・契約の見直しを事業所で検討する

3あなたが抱えなくていいこと

  • 一人で聞き続けること、相手の気が済むまで対応すること
  • 業務時間外・私用の携帯への対応
  • 「あなたのせいで」と言われた責任を引き受けること
  • 相手を説得して変えること
  • 担当を降りるかどうかを一人で決めること(事業所の判断)

※「距離を置く」=「利用者を見捨てる」ではありません。利用者の支援は事業所として続けます。担当が変わっても、他の事業所に引き継いでも、支援は途切れさせない。

4次に確認すること

  1. 事業所にハラスメント対応の手順・相談窓口があるか(管理者・法人の担当・マニュアル)
  2. 記録が「事実」として残っているか(日時・発言の言葉どおり・自分の対応)。相談先で必ず聞かれる
  3. 本人(利用者)への影響と、家族自身が支援を必要としていないか(介護者の相談窓口・家族の受診)

5誰につなぐか

順先何を
1管理者・事業所(法人のハラスメント相談窓口)事実の報告。複数名対応、窓口の一本化、文書での対応、担当変更の判断
2地域包括支援センター本人への虐待の心配がある場合の相談・通報。困難事例としての地域ケア会議
3市町村の介護保険担当課事業所だけでは対応が難しい場合の相談。自治体によっては事業者向けの相談窓口がある
4職能団体(都道府県・市の介護支援専門員協会)同じ職種への相談、事例の共有
5家族の支援先(家族会・介護者の相談窓口・家族の主治医)家族の疲れや病気が背景にある場合
6警察(生活安全課)・弁護士身体的な暴力・脅迫・つきまといがある場合。事業所として相談する

相談先の名前は地域で違います。「お住まいの市区町村名+窓口名」で検索してください。

6相手への伝え方

家族へ(事業所として・複数名で・落ち着いた場で):

「お母様のことを心配されているのは私たちも同じです。だからこそ、ケアマネにできることとできないことをはっきりさせて、できることを確実にやりたいと思っています。夜間や休日のご連絡は事業所の電話に残していただければ翌営業日に対応します。大きな声を出されると、お母様の支援に集中できなくなりますので、そこはお約束させてください。」

本人へ(本人が家族に遠慮している場合):

「ご家族のことでご心配をかけていませんか。私たちはこれからも○○さんのお手伝いを続けます。ご家族とは事業所として話をしていきますので、○○さんは安心してください。」

上司・事業所へ:

「○○様のご家族から、○月○日以降、業務時間外の電話が週○回、訪問時に『お前のせいで悪化した』と大声で言われることが○回ありました。記録は支援経過に残しています。一人で対応するのは難しいと感じているので、次回の面談から同席をお願いしたいです。事業所として『できること・できないこと』を文書でお伝えする方向で相談させてください。」

7記録の残し方

○月○日 ○時○分〜○時○分、○○様宅で訪問中、長男より「あなたの対応が悪いから母が悪化した。24時間電話に出ろ」と大声での発言あり(約20分間)。机を叩く行為が2回。本人(利用者)は同室で下を向いていた。ケアマネは「ご心配は受け止めます。ご連絡は事業所の番号にお願いします」と伝え、訪問を予定より早く終了。同日○時、管理者に口頭で報告。次回訪問は管理者同席で行うことを決定。本人への影響については次回、本人だけの場で確認予定。

この記録の文例は、ほかの34場面と並べて記録文例集にもまとめています →

あなたのケースは?

5つの質問に答えると、この記事の線引きが「あなたの答え」に合わせて整理され、相談メモになります。

あなたのケースを3分で整理する →
  • いま起きていることはどれに近いですか
  • いつから、どれくらい
  • 上司・事業所に伝えていますか
  • あなた自身の状態は
  • 本人(利用者)への影響は

8根拠

  • 厚労省が「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を作成しており、利用者・家族からのハラスメントは事業所として対応する事項とされている(厚労省の老人保健健康増進等事業で作成。平成31年3月発行、令和4年3月改訂)
  • 介護保険の指定基準(運営基準)で、職場におけるハラスメント対策(方針の明確化・相談体制の整備)が事業者に求められている(令和3年改正。指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第19条第4項)
  • 事業者には従業員への安全配慮義務がある(労働契約法第5条)
  • 高齢者虐待防止法第7条で、養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を見つけた人は、市町村に通報するよう努めなければならず(第2項)、生命・身体に重大な危険が生じている場合は通報しなければならない(第1項)。ケアマネも同じ
  • 居宅介護支援の指定基準では正当な理由なくサービス提供を拒んではならないが、ハラスメントは「正当な理由」になり得る(解釈通知は要確認。事業所として判断する)

一次資料(リンク先を実際に開いて確認済み)

本文の「要確認」は、上の資料で確認し次第、表記を確定します。

更新履歴:2026-10-02 公開(試作v1・監修中)