となりのケアマネさん

これ、私がやるの? ケース19

本人が支援を受けたがらない。放置しない・押しつけない進め方

執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん)) 実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中 法律部分:司法書士・行政書士 確認中 公開 2026-10-02/更新 2026-10-02

よくある場面 包括からの引き継ぎで訪問すると「何も困っていない」「人に来られるのは嫌」。デイに行かない、ヘルパーを断る、受診を拒む。家は荒れ、食べているか分からない。家族は「言っても聞かない」。

少しだけ開いたドアから顔をのぞかせるおじいさんに、ケアマネがやさしく話しかけている

1まず結論

本人が「要らない」と言うサービスを押しつけることはできません。でも「本人が拒んだからケアマネの手を離れる」わけでもありません。あなたの役割は、本人の意思を尊重しながら関係を切らさず、生活が崩れていくサインを見て、必要なときに医療・包括と動ける状態を保つことです。

2あなたがすること

  • 「何を嫌がっているか」を本人の言葉で聞く(サービスそのものか、人が家に入ることか、お金か、認めたくないのか)
  • 本人が受け入れられる最小の関わりを探す(月1回の電話、玄関先の5分、配食だけ、かかりつけ医の受診だけ)
  • 拒否の背景のアセスメント(認知機能・うつ・難聴・生活歴・過去の嫌な経験)
  • 生活の崩れの度合いを、毎回同じ視点で記録する(食事・清潔・住まい・体重・傷)
  • 包括・家族・民生委員・かかりつけ医と「誰がいつ見るか」を共有する(見守りの網を作る)
  • 緊急性の目安を決めておく(食べていない日数・傷・意識状態など。ここを超えたら医療・包括に連絡)

3あなたが抱えなくていいこと

  • 本人を説得しきること、サービスを受けさせること
  • 一人で通い続けて「自分だけが見ている」状態になること
  • 本人が拒んでいるのに、自分の判断で家に入ったり、勝手にサービスを入れたりすること
  • 「拒否されたから終了」と一人で判断すること(判断は包括・管理者と一緒に)

※「本人の意思を尊重する」=「放っておく」ではありません。会えなくても関わりが途切れないよう、包括と一緒に見守りを続けます。

4次に確認すること

  1. 本人が拒んでいるのは「サービス」か「人」か「お金」か「病気を認めること」か
  2. 生活の崩れの度合い(食べているか・体重・傷・住まい)と、前回からの変化
  3. 本人の判断能力(拒否が本人の意思なのか、認知症などで状況を理解できていないのか)

5誰につなぐか

順先何を
1地域包括支援センターセルフネグレクトの相談窓口。「拒否されているので一緒に方針を」と相談。判断能力が疑わしい場合の権利擁護
2市町村(高齢福祉担当・福祉事務所)市町村としての対応が要る場合。生活保護が絡む場合は福祉事務所
3認知症初期集中支援チーム(自治体設置)認知症が疑われ、受診・サービスを拒む場合に医療・介護の専門職が訪問する仕組み(設置状況は自治体で確認)
4かかりつけ医本人が信頼している医療者からの声かけ。受診拒否なら往診・訪問診療の相談
5民生委員・近隣日常の見守り。「ケアマネ」は拒んでも「近所の人」は受け入れることがある
6家族本人の生活歴・嫌がる理由の情報源。「本人が聞き入れる人」を探す
7認知症疾患医療センター・精神科うつ・精神疾患・認知症の診断が要るとき、本人が受診できる入口を探す場合

相談先の名前は地域で違います。「お住まいの市区町村名+窓口名」で検索してください。

6相手への伝え方

本人へ:

「無理にサービスを使ってほしいとは思っていません。○○さんが『これは嫌だ』と言えることは大事なことです。ただ、私は○○さんがこれからも家で暮らしていけるようにお手伝いする役目なので、月に一度だけ顔を見せに来てもいいですか。何も頼まなくて大丈夫です。」

家族へ:

「ご本人が『要らない』とおっしゃっている以上、無理にサービスを入れることはできません。でも、このまま離れてしまうのではなく、包括支援センターと一緒に見守りを続けます。ご本人が唯一話を聞く方はどなたですか。その方の声かけが、受け入れの糸口になることがあります。食べていない日が続く、けがをした、といったときはすぐに連絡をください。」

7記録の残し方

○月○日、訪問。本人「ヘルパーは要らない、自分でできる」と拒否。理由を聞くと「他人に台所を触られたくない」とのこと。サービス導入は本人の意向を尊重し保留。月1回の訪問(玄関先で可)は本人了承。室内は台所にごみ袋3袋、においあり。冷蔵庫内はパンと牛乳のみ(本人の許可を得て確認)。本人「服がゆるくなった」と発言、体重は未測定。傷・あざはなし。長女へ電話し、本人の様子と「無理に入れない・見守りを続ける」方針を説明、長女了承。包括○○氏に電話し、セルフネグレクトのおそれとして共有、○日に同行訪問の予定。かかりつけ医○○へ次回受診時の声かけを依頼。管理者に報告済み。

この記録の文例は、ほかの34場面と並べて記録文例集にもまとめています →

あなたのケースは?

5つの質問に答えると、この記事の線引きが「あなたの答え」に合わせて整理され、相談メモになります。

あなたのケースを3分で整理する →
  • 拒んでいるのはどれですか
  • 本人が拒む理由として近いのは
  • 生活の状態は
  • 体の状態は
  • 本人を気にかけている人は

8根拠

  • 居宅介護支援は本人の意向を尊重して行うことが運営基準で求められている(第1条の2第3項「利用者の意思及び人格を尊重し」)
  • 本人の意思決定を支える考え方は厚労省のガイドラインに示されている(「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」。平成30年6月、第2版 令和7年3月)
  • セルフネグレクトは高齢者虐待防止法の定義には含まれないが、市町村・包括が対応すべきものとして国のマニュアルで扱われている(厚労省老健局「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について」令和7年3月、同Q&A)
  • 地域包括支援センターの業務に総合相談・権利擁護が位置づけられている(介護保険法第115条の46第1項・第115条の45第2項第1号・第2号の包括的支援事業)
  • 生命・身体に危険があると判断されるときは、本人の同意がなくても市町村・包括への相談が優先される(市町村の対応指針。要確認)

一次資料(リンク先を実際に開いて確認済み)

本文の「要確認」は、上の資料で確認し次第、表記を確定します。

更新履歴:2026-10-02 公開(試作v1・監修中)