
これ、私がやるの? ケース34
虐待を通報したら家族が激怒した。通報したケアマネを守るものと対応の手順
執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん))
実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中
法律部分:司法書士・行政書士 確認中
公開 2026-10-02/更新 2026-10-02
よくある場面 虐待の疑いで市に相談・通報した。数日後、息子から電話。「お前が通報したんだろう」「個人情報を漏らした、訴えるぞ」「会社に言ってクビにさせる」「謝りに来い」。毎日のように電話が来る。通報してよかったのか、怖くて眠れない。

1まず結論
虐待の疑いを市町村・包括に通報・相談したことは、法律に沿った行動です。法律は、守秘義務の決まりが通報を妨げるものと解釈してはならないとしています。あなたの役割は、家族の怒りに一人で応じず、市町村と事業所に窓口を移し、本人への支援を続けるところまで。「誰が通報したか」を認めたり、謝りに行ったりする必要はありません。
2あなたがすること
- 家族の言動(日時・言葉・回数)を、その日のうちに市町村の虐待対応の担当と包括に伝える(通報後の家族の様子は、虐待対応の大事な情報になる)
- 管理者に報告し、事業所として受ける形にする(家族からの電話は管理者が受ける、訪問は二人で行く、言動は記録に残す。→ケース12へ)
- 家族には「誰が通報したか」「市に何を伝えたか」は答えない。市の対応についての問い合わせ先として、市の担当を案内する
- 本人の安全と、サービスが止まっていないかを確かめる
- 身の危険を感じたら警察に相談する(今まさに危ないときは110番、相談は#9110)
- 担当を続けるか交代するかを、本人の利益を一番に、市町村・包括・管理者と相談して決める
- 自分の心と体の負担を管理者に伝える(眠れない、怖いは当然の反応)
3あなたが抱えなくていいこと
- 謝りに行くこと、一人で家族に会うこと
- 通報したかどうかを答えること
- 「虐待ではなかったら」の責任を一人で負うこと(虐待かどうかを判断して対応するのは市町村。疑いの段階で通報してよい。→ケース20へ)
- 毎日の電話に毎回応じること
- 家族への説明や調査(市町村の役割)
※窓口を移す=本人から離れる、ではありません。家族の怒りには事業所と市町村が向き合い、あなたは本人への支援を途切れさせません。
4次に確認すること
- 市町村の担当者の名前と、家族への対応の方針(誰が家族に説明するか)
- 本人が今、安全に過ごせているか
- 事業所として、家族からの電話・来訪をどう受けるか
5誰につなぐか
| 順 | 先 | 何を |
|---|---|---|
| 1 | 市町村の高齢者虐待の担当(高齢福祉課など) | 家族の言動を伝える。家族への説明・対応は市町村が主体 |
| 2 | 地域包括支援センター | 市町村と一緒に家族への関わりを組む。担当の継続・交代の相談 |
| 3 | 自事業所(管理者・法人) | 電話・来訪の窓口を事業所に。ハラスメントとしての対応 |
| 4 | 警察 | 身の危険を感じるとき(110番)、脅しや付きまといの相談(#9110) |
| 5 | 法人の顧問弁護士・事業所の損害保険 | 「訴える」「賠償しろ」と言われたとき。一人で返事をしない |
| 6 | 都道府県・市町村のハラスメント相談窓口 | 介護現場のハラスメントの相談(窓口の有無は地域による) |
相談先の名前は地域で違います。「お住まいの市区町村名+窓口名」で検索してください。
6相手への伝え方
家族へ(電話で。短く、同じ言葉で繰り返す):
「お怒りのお気持ちは受け止めました。ただ、市への相談の中身や、どなたが相談したかについては、私からお答えできません。市の対応については、市の○○課にお問い合わせください。お母様への支援は、これまでどおり続けます。」
電話が何度も続くとき:
「この件は、事業所として管理者の○○がお受けします。私個人ではお返事できませんので、事業所の電話にお願いします。」
「謝りに来い」と言われたとき:
「お伺いして謝罪することはできません。お話は事業所として管理者がお受けします。」
本人へ:
「○○さんのことが心配なので、市の方にも一緒に見守ってもらうことにしました。私はこれからも来ます。困っていることや怖いことがあったら、いつでも言ってくださいね。」
7記録の残し方
○月○日 10:15、長男より事業所に電話(担当ケアマネが受電、約15分)。「お前が通報したんだろう」「個人情報を漏らした、訴える」「会社に言って辞めさせる」「謝りに来い」と発言。通報者や市への相談内容については答えられないこと、市の対応は市高齢福祉課に問い合わせてほしいことを伝え、本人への支援は継続すると伝える。同日、管理者に報告。以後、長男からの電話は管理者が受けることとした。同日11:00、市高齢福祉課○○氏と包括○○氏に長男の言動を電話で伝える。市より、長男への説明は市が行うとの回答。○日の訪問は管理者と二人で行う予定。
(以後の電話)○月○日 19:40、長男より事業所に電話(管理者が受電、約20分)。発言の要旨と対応、市への報告をその都度記録。
この記録の文例は、ほかの34場面と並べて記録文例集にもまとめています →
あなたのケースは?
5つの質問に答えると、この記事の線引きが「あなたの答え」に合わせて整理され、相談メモになります。
あなたのケースを3分で整理する →- 家族は、通報したのがあなただと
- 家族の言動は(複数可)
- 市町村・包括の対応は
- 担当は
- 事業所は
8根拠
- 高齢者虐待防止法第7条第1項:養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を見つけた人は、生命・身体に重大な危険が生じている場合、速やかに市町村に通報しなければならない。第2項:それ以外の場合も通報するよう努めなければならない
- 同法第7条第3項:刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、通報をすることを妨げるものと解釈してはならない
- 同法第8条:通報を受けた市町村の職員は、職務上知り得た事項であって通報をした者を特定させるものを漏らしてはならない
- 通報後の事実確認・家族への対応・本人の保護の判断は市町村が主体(厚労省「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について」令和7年3月)
- 家族からの暴言・脅し・度を越した電話は、介護現場のハラスメントとして事業所で対応する(厚労省のハラスメント対策マニュアル・事例集、東京都の対策資料など)
- 調査:日本介護支援専門員協会(2024年11〜12月、1293人)で、過去1年間にカスハラを受けたケアマネは34%、加害者は主介護者やキーパーソンが72%(参考:https://fukushishimbun.com/jinzai/40424 )
- 参考:あるある収集 #74(虐待通報したら家族が激怒、「解雇させろ」「賠償しろ」と毎日電話) https://kaigokeiei.com/news/9-jbb6ccal/ / 条文:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82aa7582&dataType=0
一次資料(リンク先を実際に開いて確認済み)
- 市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(高齢者虐待対応マニュアル)厚生労働省老健局・令和7年3月(初版平成18年4月、平成30年3月・令和5年3月改訂)
- 養護者による高齢者虐待対応マニュアル郡山市保健福祉部地域包括ケア推進課・郡山市地域包括支援センター連絡協議会・令和6年4月改訂
- 令和6年度「居宅介護支援事業所に勤務する介護支援専門員の“やりがい”と“カスタマーハラスメント”に関する実態調査報告書」一般社団法人日本介護支援専門員協会・令和7年3月(調査:令和6年11月28日~12月23日)
- 介護現場におけるハラスメント事例集株式会社三菱総合研究所(厚労省 令和2年度老健事業)・令和3年3月
本文の「要確認」は、上の資料で確認し次第、表記を確定します。
更新履歴:2026-10-02 公開(試作v1・監修中)
