となりのケアマネさん

これ、私がやるの? ケース14

成年後見を考える段階? 迷ったときにケアマネが整理すること

執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん)) 実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中 法律部分:司法書士・行政書士 確認中 公開 2026-10-02/更新 2026-10-02

よくある場面 本人の物忘れが進み、支払いや契約が一人では難しくなってきた。施設入所の契約が近い。家族は「まだ早いのでは」「後見人をつけると自由がなくなると聞いた」。身寄りがなく、誰が本人の代わりに判断するのか分からない。

相談室でケアマネが相談員と資料を見ながら相談している

1まず結論

後見制度を使うかどうかを決めるのはあなたではなく、本人・家族と、相談先(包括・権利擁護センター・家庭裁判所)です。あなたの役割は「本人に今どんな支援が要るのか」を整理して、相談に行くべき段階かを見極め、つなぐところまでです。「後見人をつける」がゴールではなく、「本人の暮らしを守る仕組みを決める」がゴールです。

2あなたがすること

  • 「何の支援が要るか」を整理する(日常のお金/契約/財産を守る/方針を決める人)
  • 本人の判断能力の状態をアセスメントに残し、主治医の見立てを確認する
  • 制度を使わずに済む方法(社協の日常生活自立支援事業・家族の代理人カード・見守り)で足りるかを先に検討する
  • 「契約」が迫っているなら、期限から逆算して相談を急ぐ(申立てから決定まで月単位の時間がかかる)
  • 本人に、制度の目的(本人を守る仕組み)を分かる言葉で伝え、本人の意向を聞く
  • 包括(または権利擁護センター)に相談し、申立ての段取り(誰が申立人になるか)を確認する
  • 相談の経過をケアプラン・支援経過に残す

3あなたが抱えなくていいこと

  • 後見の申立てを自分で行うこと(申立人は本人・配偶者・一定範囲の親族・市町村長など。民法第7条・老人福祉法第32条)
  • 後見人・保佐人・補助人になること
  • 制度の類型(後見・保佐・補助のどれか)を判断すること(医師の診断書をもとに家庭裁判所が決める)
  • 家族の意見の対立を調整すること

※「決めない」=「先送り」ではありません。相談に行く段階かを見極めて相談先につなぎ、決まるまでの間の暮らしの支援は途切れさせない。

4次に確認すること

  1. 「何の支援が要るか」を1つの文にできるか(例:「施設入所の契約を本人に代わって結ぶ人が要る」)。相談先で最初に聞かれる
  2. 本人の判断能力について医師の見立て(診断書)があるか、取れるか
  3. 申立てを行える人(家族)がいるか。いなければ市町村長申立ての相談になる

5誰につなぐか

順先何を
1地域包括支援センター(権利擁護)「後見が要るか」を含めた相談の入口。市町村長申立ての窓口
2市町村の権利擁護センター・成年後見センター(中核機関)制度の説明、申立ての手続き支援、後見人候補の相談
3社会福祉協議会(日常生活自立支援事業)判断能力がある程度残っていれば、後見を使わずに日常のお金の支援ができる
4主治医・もの忘れ外来・認知症疾患医療センター判断能力の評価と診断書
5家庭裁判所(後見係)申立ての受付。手続きの案内は裁判所の窓口・サイト
6法テラス費用が心配な場合の法律相談、費用の立替の相談
7司法書士会・弁護士会・社会福祉士会(専門職後見人の団体)専門職後見人の相談。費用が発生する

相談先の名前は地域で違います。「お住まいの市区町村名+窓口名」で検索してください。

6相手への伝え方

本人へ:

「○○さんが自分で決められるうちに、『困ったときに一緒に決めてくれる人』を用意しておく仕組みがあります。○○さんの自由を取り上げるものではなくて、○○さんを守るためのものです。今すぐ決めなくていいので、一度、包括の方に話を聞いてみませんか。私も一緒に行きます。」

家族へ:

「後見制度は『使うべきかどうか』を今決める話ではなくて、『お母様に今どんな支援が要るか』を整理する段階だと思っています。施設の契約が○月に必要になるので、お母様が契約の判断が難しくなっていれば、制度を使うか、他の方法で足りるかを、包括や権利擁護センターに相談しておきたいです。申立てから決まるまで時間がかかるので、早めに相談だけしておくのが安心です。」

7記録の残し方

○月○日、長女より「母の物忘れが進み、施設入所の契約を自分で結べるか不安。後見制度を使うべきか」と相談あり。本人の状況:支払いは長女が管理、契約内容の理解は説明すれば部分的に可能(主治医の診断あり)。必要な支援を「施設入所の契約と今後の財産管理」と整理。ケアマネとして後見の要否は判断できないこと、相談先で整理できることを説明し、長女了承。包括(権利擁護担当)に相談を予約(○日、長女同席)。本人には「困ったときに一緒に決めてくれる人の仕組み」として説明し、「娘と相談する」とのこと。管理者に報告済み。

この記録の文例は、ほかの34場面と並べて記録文例集にもまとめています →

あなたのケースは?

5つの質問に答えると、この記事の線引きが「あなたの答え」に合わせて整理され、相談メモになります。

あなたのケースを3分で整理する →
  • いま困っている、またはこれから必要になることはどれですか
  • 本人は、契約やお金の意味を理解して決められますか
  • 家族・身寄りは
  • すでに使っている支援は
  • 本人の意向は

8根拠

  • 成年後見制度は民法に基づき、判断能力が不十分な人の財産管理や契約を支援する制度。申立人は本人・配偶者・一定範囲の親族などで、身寄りがない場合は市町村長が申し立てることができる(老人福祉法第32条の市町村長申立て)
  • 成年後見制度は民法の改正による見直しが進んでいる(法制審議会 民法(成年後見等関係)部会が令和8年1月27日に要綱案を決定。法改正の成立・施行の時期と、「後見・保佐・補助」の類型がどう変わるかは要確認)。このため、このケースは類型で分けず「何の支援が要るか」「相談に行く段階か」で書く
  • 成年後見制度利用促進法に基づき、市町村に中核機関(権利擁護センター等)が整備され、相談の入口となっている(整備状況は自治体ごと。要確認)
  • 日常生活自立支援事業は本人が契約できる範囲で日常的な金銭管理を支援し、後見制度との使い分けがある(厚労省「日常生活自立支援事業」ページ:対象は本事業の契約内容について判断し得る能力を有する方)
  • ケアマネが担当利用者の後見人になることは、利益相反の観点から一般に避けるべきとされる(事業所の規程と法律部分は要確認)
  • 居宅介護支援の範囲は「必要な支援につなぐ」までで、申立てや後見の実行は含まれない

一次資料(リンク先を実際に開いて確認済み)

本文の「要確認」は、上の資料で確認し次第、表記を確定します。

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更新履歴:2026-10-02 公開(試作v1・監修中)