
これ、私がやるの? ケース13
本人のお金の管理が怪しい。ケアマネが最初に確認する3つ
執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん))
実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中
法律部分:司法書士・行政書士 確認中
公開 2026-10-02/更新 2026-10-02
よくある場面 利用料の引き落としができない月が増えた。同じ健康食品が段ボールで届く。訪問販売の契約書が何枚も出てくる。「お金がない」と言うのに年金は入っているはず。財布に大金を入れて持ち歩く。通帳の残高が急に減った。

1まず結論
本人のお金を代わりに管理するのはあなたの役割ではありません。ただし「お金の管理が崩れてきた」サインに気づき、背景を見立てて、管理を支える人・仕組みにつなぐところまではあなたの役割です。判断能力の低下か、被害か、生活の困窮かで、つなぐ先が変わります。
2あなたがすること
- 気になる事実を具体的に記録する(未払いの月と額・届いた物・契約書の日付と金額・本人の説明)
- 背景の見立てをアセスメントに残す(認知機能の変化/被害(悪質商法・搾取)/収入の減少・生活の困窮/うつ・意欲低下)
- 本人に「お金のことで困っていないか」を、責めない形で聞く(自尊心に配慮)
- 本人の同意のもと家族に事実を共有し、家族が管理に動けるかを確認する
- 支払いが滞ってサービスが止まらないよう、事業所・提供事業者と共有する
- 判断能力の低下が疑われれば主治医に相談し、管理の仕組み(社協の日常生活自立支援事業/後見制度)へつなぐ
- 被害の疑いがあれば消費生活センター・包括の権利擁護へ(クーリングオフには期限がある)
3あなたが抱えなくていいこと
- 通帳・現金を預かること、支払いを代わりにすること(ケース1と同じ)
- 本人が買った物・結んだ契約の解約を代理で行うこと
- 「お金が減った原因」を自分で突き止めること(調査は役割ではない)
- 家族間のお金の争いを仲裁すること
※「管理しない」=「気づかないふり」ではありません。サインに気づいたら、管理を担う人・仕組みが入るまで支援を途切れさせず、支払いが止まってサービスが止まることは防ぎます。
4次に確認すること
- 何にいくら、いつから(未払いの額と期間、契約書の日付・金額・業者名)。相談先で必ず聞かれる
- 本人の判断能力の変化(物忘れ・計算・日付)と、主治医の見立てがあるか
- 通帳・カードを扱っている人が本人以外にいるか(家族・知人・業者)
5誰につなぐか
| 順 | 先 | 何を |
|---|---|---|
| 1 | 地域包括支援センター(権利擁護) | 判断能力の低下・搾取の疑い・身寄りがない場合の相談の入口。後見制度の相談 |
| 2 | 消費生活センター(188) | 悪質商法・訪問販売の契約の相談、クーリングオフ。本人・家族が相談する |
| 3 | 社会福祉協議会(日常生活自立支援事業) | 日常的な金銭管理の支援。本人が契約できることが条件 |
| 4 | 市の福祉課・生活困窮者自立支援の相談窓口 | 収入が減って生活が回らない場合(減免・生活保護の相談を含む) |
| 5 | 主治医・もの忘れ外来・認知症疾患医療センター | 判断能力の医学的な評価 |
| 6 | 家族 | 本人の同意のもと、通帳・カードの管理、代理人カード、自動引き落としの設定 |
| 7 | 権利擁護センター・司法書士会・弁護士会 | 財産が大きい、家族間で争いがある、後見の申立てを検討する場合 |
相談先の名前は地域で違います。「お住まいの市区町村名+窓口名」で検索してください。
6相手への伝え方
本人へ:
「最近、お支払いのことで少し気になることがあって。責めているのではなくて、○○さんが安心して暮らせるように、お金のことを一緒に見てくれる人や仕組みがあるので、それをお伝えしたいんです。同じ物が何箱も届いていましたよね。よければ、社協さんに『毎月の支払いを一緒に見てくれる仕組み』があるので、話を聞いてみませんか。」
家族へ:
「お母様のお金のことで、いくつか気になる事実があるのでお伝えします。○月と○月の利用料が引き落とせておらず、同じ健康食品が○箱届いていました。私がお金を管理することはできませんが、ご家族で通帳を見ていただくか、社協の金銭管理の仕組みを使うか、判断能力の心配があれば主治医に相談するか、一緒に考えたいです。契約したものはクーリングオフに期限があるので、消費生活センターに早めに相談していただけますか。」
7記録の残し方
○月○日、訪問時に玄関に同一の健康食品の段ボール○箱を確認(契約書の日付は○月○日と○月○日、各○万円)。本人に確認したところ「電話で勧められて断れなかった」とのこと。○月分の利用料も引き落とし不能との連絡が事業所にあり。本人に、お金を一緒に見る仕組み(社協の日常生活自立支援事業)を説明し、「娘に相談してから」とのこと。本人同意のうえ長女に電話で事実を共有し、消費生活センターへの相談と通帳の確認を依頼(○日までに返答予定)。物忘れについては次回受診時に主治医へ相談する方向。管理者に報告済み。
この記録の文例は、ほかの34場面と並べて記録文例集にもまとめています →
あなたのケースは?
5つの質問に答えると、この記事の線引きが「あなたの答え」に合わせて整理され、相談メモになります。
あなたのケースを3分で整理する →- 気になっているのはどれですか
- 本人は自分のお金の状態を説明できますか
- 気になり始めてどれくらいですか
- 家族・身寄りは
- 本人以外の誰かが関わっている様子は
8根拠
- 金銭管理の代行はケアマネの業務に含まれないが、本人の生活状況の変化を把握してケアプランに反映すること、必要な支援につなぐことは居宅介護支援の範囲(運営基準 第13条第13号)
- 消費者契約法・特定商取引法に基づき、訪問販売・電話勧誘などにはクーリングオフや取消しの制度がある(期間・要件は要確認。消費生活センターに相談)
- 高齢者虐待防止法では、養護者による「経済的虐待」が虐待の類型に含まれる。疑いがあれば市町村・包括に相談・通報(高齢者虐待防止法第2条第4項第2号・第7条)
- 日常生活自立支援事業(社協)は、日常的な金銭管理を本人との契約で支援する(厚労省「日常生活自立支援事業」ページ・全国社会福祉協議会パンフレット「ここが知りたい 日常生活自立支援事業 なるほど質問箱」)
- 判断能力が不十分な場合の財産管理は成年後見制度の対象(→ ケース14)
一次資料(リンク先を実際に開いて確認済み)
- 中間整理(本文)※別添「居宅介護支援事業所におけるケアマネジャーの業務について」厚生労働省 ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会・令和6年12月
- 日常生活自立支援事業パンフレット「ここが知りたい 日常生活自立支援事業 なるほど質問箱」「あなたのくらしのあんしんのために」/厚労省制度ページ/事務連絡「日常生活自立支援事業の適正な実施の徹底について」社会福祉法人全国社会福祉協議会/厚生労働省社会・援護局地域福祉課・パンフ2009・2010年改訂/事務連絡 令和3年12月21日
- 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)・内閣府・金融庁・消費者庁・総務省・法務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省・令和6年6月
- 社会保障審議会福祉部会報告書厚生労働省 社会保障審議会福祉部会・令和7年12月18日
- ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会(第6回)参考資料「ケアマネジメントに係る現状・課題」厚生労働省老健局・令和6年12月2日
- 身寄りのない高齢者等への対応、成年後見制度の見直しへの対応について厚生労働省 社会保障審議会福祉部会(第29回)資料2・令和7年9月8日
本文の「要確認」は、上の資料で確認し次第、表記を確定します。
関連するケース
更新履歴:2026-10-02 公開(試作v1・監修中)
