
これ、私がやるの? ケース22
本人は「家にいたい」、家族は「施設に」。板挟みのときケアマネは誰の味方か
執筆:石田竜生(作業療法士・介護支援専門員資格(株式会社おふとん))
実務の監修:主任介護支援専門員(大阪府・経験11年) 監修中
法律部分:司法書士・行政書士 確認中
公開 2026-10-02/更新 2026-10-02
よくある場面 本人は「この家で最期まで」。同居の娘は「もう限界、施設に入れてほしい」。担当者会議のたびに両方から「あなたはどっちの味方なの」。どちらかを選ぶ役をさせられそうで、動けなくなっている。

1まず結論
「家か施設か」を決めるのはケアマネではなく、本人と家族です。あなたの役割は、本人の意思を守りながら、家族の負担を減らす手を出し切り、「家で続けるならこの条件、施設ならこの選択肢」と両方の道を見える形にして、本人と家族が決められる場を作るところまでです。どちらかの味方になる必要はありません。
2あなたがすること
- 本人の「家にいたい」の中身を聞く(何が大事か:住み慣れた場所/家族と一緒/人に迷惑をかけたくない/施設のイメージ)
- 家族の「施設に」の中身を聞く(何が限界か:夜間の介助/仕事との両立/本人との関係/自分の体調)。本人のいない場で、家族だけの時間を取る
- 家族の負担を減らす手を出し切る(ショートステイ・通所の回数・夜間の見守り・訪問看護・家族会・介護休業)
- 「家で続ける条件」と「施設の選択肢(種類・費用・見学)」の両方を並べて、本人・家族に見せる
- 本人の意思決定を支える(分かる言葉で・一度に決めさせない・施設を見に行く・体験入所)
- 担当者会議に主治医・包括を交え、ケアマネ一人で抱えない形にする
- 本人の意向・家族の意向・話し合いの経過を記録に残す(後で「聞いていない」とならないように)
3あなたが抱えなくていいこと
- 本人か家族か、どちらかを選んで説得すること
- 家族の「限界」を、あなたの訪問や電話で埋めること
- 施設探しを丸投げで引き受けること(情報提供と見学の段取りまで。申込みは本人・家族)
- 家族の中の対立(きょうだい間の意見の違い)を仲裁すること
※「決めない」=「放っておく」ではありません。両方の道を整えて、決められるまで伴走し、決まった後の支援(在宅の強化でも、施設への移行でも)を途切れさせません。
4次に確認すること
- 本人の判断力と、「家にいたい」がどの程度理解したうえでの意思か(主治医・認知機能)
- 家族の負担の中身と、まだ使っていないサービス(ショート・夜間・レスパイト・介護休業・家族会)
- 今すぐの危険(転倒・火・薬・家族の健康)の有無。あれば「決めるまでの安全策」を先に
5誰につなぐか
| 順 | 先 | 何を |
|---|---|---|
| 1 | 主治医・訪問看護 | 本人の状態の見通し(在宅で続けられるか、医療の面から)。本人・家族への説明 |
| 2 | ショートステイ・通所・夜間対応のサービス事業所 | 家族の負担を減らす。ショートの定期利用は「施設を試す」機会にもなる |
| 3 | 地域包括支援センター | 家族支援の地域資源、地域ケア会議、家族会・介護者の相談窓口 |
| 4 | 家族会・介護者の相談窓口(自治体・NPO) | 家族が「限界」を話せる場。ケアマネ以外の受け皿 |
| 5 | 施設の相談員(特養・老健・グループホーム・有料) | 見学・体験入所・費用の説明。申込みは本人・家族 |
| 6 | 勤務先の相談窓口(介護休業・介護休暇) | 家族が働いている場合。制度の窓口は勤務先・ハローワーク |
相談先の名前は地域で違います。「お住まいの市区町村名+窓口名」で検索してください。
6相手への伝え方
本人へ:
「○○さんが『この家にいたい』と思っていること、ちゃんと受け止めています。私は○○さんの気持ちを一番に考えます。ただ、娘さんが今かなり疲れていて、このままだと娘さんが倒れて、結局家にいられなくなるのが心配なんです。家で続けるために、娘さんが休める日を作る方法を、一緒に考えさせてください。」
家族へ:
「限界だと感じているお気持ち、よく分かります。私はどちらの味方ということではなく、お母様が望む暮らしと、娘さんが倒れないことの両方を守りたいと思っています。まず娘さんが休める日を増やす方法を全部出してみて、それでも難しければ、施設という選択肢も一緒に見ていきましょう。決めるのは今日でなくていいです。」
7記録の残し方
○月○日、担当者会議にて本人「家で最期まで過ごしたい」、長女「夜間の介助が続き限界、施設入所を希望」と意向の相違あり。ケアマネがどちらかを決める立場ではなく、両方の道を整えることを説明し、双方了承。長女と別途面談(○日)し、負担の中身は夜間の排泄介助(週4〜5回)と仕事との両立と確認。負担軽減としてショートステイ月○泊・訪問看護の夜間相談・家族会を提案、長女「試してみる」。本人には家で続ける条件として夜間の見守り機器の導入を説明し同意。施設の情報(特養・老健の費用・待機状況)は長女に資料提供、見学は長女の希望があれば段取り。主治医に状態の見通しを○日に確認予定。包括○○に共有。管理者に報告済み。
この記録の文例は、ほかの34場面と並べて記録文例集にもまとめています →
あなたのケースは?
5つの質問に答えると、この記事の線引きが「あなたの答え」に合わせて整理され、相談メモになります。
あなたのケースを3分で整理する →- 本人は、自分の状況(体の状態・家族の負担)を理解したうえで「家にいたい」と言っていますか
- 家族が「施設に」と言う一番の理由は
- 今すぐの危険はありますか
- 家族の負担を減らす手は使い切っていますか
- 本人と家族は、この話を同じ場で話せますか
8根拠
- 居宅介護支援の基本方針は、利用者の意思・人格を尊重し、常に利用者の立場に立って行うこと(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第1条の2第3項)
- 本人の意思決定を支える考え方は、厚労省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(平成30年6月。第2版 令和7年3月)に示されている(本人の意思を確認し、決めるための情報を分かる形で提供する)
- 家族(介護者)の状況はアセスメントの対象(課題分析標準項目の「家族等の状況」。介護保険最新情報Vol.1178、令和5年10月16日)。ショートステイ・通所は介護者の負担軽減が目的の一つ
- 家族の介護休業・介護休暇は育児・介護休業法に基づく制度(詳細は勤務先・ハローワーク。要確認)
- 厚労省「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会 中間整理」(令和6年12月)の4分類で言えば、本人・家族の意向の調整は①法定業務そのもの。介護保険施設への紹介その他の便宜の提供は法定業務に含まれる(運営基準第13条第17号)。施設を選ぶ・申し込むのは本人・家族で、探す作業の代行までは含まれない(→ケース32へ)
- 家族の負担が本人への虐待につながる恐れがある場合は、高齢者虐待防止法に基づき包括・市町村へ相談(→ケース20)
- 参考:https://www.tsukui-staff.net/kaigo-garden/life/keamanenonayami/(板挟みで悩むケアマネの声の整理)/https://i.care-mane.com/news/entry/case_kazoku_shien(「限界だが施設とは言えない」と話す家族への支援例)
一次資料(リンク先を実際に開いて確認済み)
- 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)/事例集厚生労働省・令和7年3月
- 中間整理(本文)※別添「居宅介護支援事業所におけるケアマネジャーの業務について」厚生労働省 ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会・令和6年12月
- 権利擁護支援と成年後見制度活用ハンドブック 意思決定を支える たちかわ版 2023年度版立川市・立川市社会福祉協議会 地域あんしんセンターたちかわ・2023
本文の「要確認」は、上の資料で確認し次第、表記を確定します。
関連するケース
更新履歴:2026-10-02 公開(試作v1・監修中)
